古いものと暮らす
なぜか、古いものが好きである。古いものやキズ物は美しくない、誰が使ったかわからない品物は不安と思われる方もおられると思いますが、私は好きである。縁あって巡り合い、再び使用させて頂ける事が嬉しく思うのです。
家業も、古いものの修復。仏壇・仏具、寺院用品全般、神社のみこし。美術工芸品からタンスまで、漆塗りの必要なものは、全て修復が可能です。昨年は身の丈2尺(60㎝)の仏像を20体修復させて頂く機会がありました。指は折れ、鼻はネズミにかじられ、耳は虫に喰われ穴の空いた状態です。それに70年から100年もの間に積もったほこり。漆や金箔は、はがれてぼろぼろの状態でやってきます。長年のほこりを特別な洗浄液で洗い、傷んだところを修理して漆を幾度も塗り重ね、金箔を張り替えます。時間はかかりますが、目を見張る様に輝きます。最善を尽くした品を見るたびに、我ながらよくやったという満足感があります。
これからも心を込めて、仕事をし、日々、努力と精進を重ねて行くつもりです。
仏像は全て、蓮の花に乗っておられます。久し振りに古い布と向き合い、蓮の花を作ってみました。うまく、作れなくても一針一針縫っていると、不思議と心がやすらぐのです。
仕事も、古いもの。自宅も築70年の古いもの。趣味も古い布でチクチク…。自分自身もまた、古くなりつつあります。味わいのある、古いものになっていきたいものです。
㈲みやけ 三宅 千代子