昨年 足を痛め身軽に動けなくなり、若い頃聞いた話を思い出した。体で一番大事な所はどこですか?と尋ねられ、一瞬どこだろう?頭かなぁ?それとも…。思いをめぐらした時、それは足。足はどこへでも連れて行ってくれる。御飯ですよと言われれば食卓まで運んでくれ、足は食卓の下に入れられその御馳走すら見られない。お座敷だとお尻の下にたたまれる始末。それでも行きたい所へ連れて行ってくれたり文句も言わずに働き続けてくれる。
人がほっこりする所のお風呂。誰でも湯船につかるとああ極楽、極楽という気持ちになる。そんなよい所に一番に入るのはさすがに足である。もし頭から入ったら大変なことになるし、手から入れば逆立ちしなければならない。どんな偉い人でも足から入りますと言われた。不平を言わずに一生懸命働いていればきっと良い事もあると思った。そう言えば昔の人は体の中で足にだけ「御」という字を付け御足(おみあし)と言っていた。他にもお金が無いと言わずお足がないからなどという。
齢を重ねた私には頷ける話である。今まで何とも思わずに使ってきた体を、今更ながら大切にしたいと思い、親に感謝の気持ちでいっぱいになった。
松永縫工所 松永雅子